寝ても覚めても

寝ても覚めても

寝ても覚めても

サブカル好みの女の子が好きな要素満載な気もするし、五感を巧みにテクストにする技術的挑戦もおもしろいし、小説の中に世界が立ち上がる体験なんていうありふれた醍醐味?もあり、簡単にするっと読めそうで読者の精神を寝かさないような試すような。大好き!としか言いようのない。簡単に「世界」というと、「本当にそうか?」というような。まとまりのない、まとめようとしない、ばらばらで雑多だけど、ばらばらなものをばらばらに描く/捉えるってどうやって人間はできているのかって、不思議すぎるし、この小説家はそれに挑戦しているのかしら、と思う。人の心情描写やあらすじよりも風景描写が多く、通常の読みやすい小説と比べその割合は逆転している。だから、主役は朝子の「世界」なのかな、と思う。

好きな部分。
「洋服を買わないと死んでしまう、と思った。こうして正しい形になるために働いているのだから。忙しいとかお金がないとかくだらない理由を言って洋服屋を見に行かなければ、わたしは死んでしまう。」
と引用してみたけれど、ここだけ引用しても全然だめで、前後どころか全てを読まないとだめだ、と気付くのであった。でも、こういう気持ちをはっきりと力強く書いてくれてうれしい。

なのに、もう一発。
「カメラがなければ絶対に見ることができなかった遠い場所を毎日大量に見ていた。それらは素晴らしかったし、カメラがなければ見なくてもよかったものかもしれなかった。」

もう一発。
「このように素晴らしい洋服を作った人に敬意と謝意を表すために、わたしはお金を使うべきだった。そうすることで、きっと世の中はより良い形になっていくと思うから。」
力強い!

大好きだ!