パリ発キッチン物語おしゃべりな台所

パリ発キッチン物語おしゃべりな台所

パリ発キッチン物語おしゃべりな台所

おしゃれなパリのライフスタイルの紹介で軽く読める内容かと思いきや、
取材/インタビュー、文章、構成、とても読み応えがあり、好きな内容だった。

特に良かったポイントは、以下の2点。
・リタイアした後、一人暮らしをする高齢の女性の台所が取材されている
・取材と再構成された本書は、食べるだけでなく、「作る」、「伝える」、といった生きることを豊かにする「食」のあり方を浮かび上がらせている

心に残った文章
「自分が受け継いできたおいしい味の記憶をせっせと再生産して子供たちに伝えていくこと
各地方の持つ多彩な文化がモザイクをなす国フランス。故郷を離れてパリで暮らす人々も、自らを育んだ"マ・レジョン"(私の地方)の味覚への思い入れは深い。フランス料理と一口に言っても、それは結局あらゆる郷土料理の集合体。そして郷土料理とは、つまるところその土地で受け継がれてきた家庭の味に他ならない。
特定の食べ物がブームになって人々がこぞって飛びつくということがない。伝統に対する愛着と揺るぎない誇りがあるから。」

「食卓の快楽は、あらゆる年齢、身分、国のものであり、毎日のものである。食の愉しみは、どんな快楽とも結びつくことができ、それらが失われたあとも最後まで残って私たちの慰めとなる。ブリア・サヴァラン」

「美食とは、毎日の食事を大切に愛しむ姿勢であり、生活術のようなもの。私たちが代々受け継いできたのは、その精神的財産だと思うの」